糖尿病の正体
国民病といわれる糖尿病
糖尿病の語源はギリシャ語で「蜜のように甘い尿が常に出る」という意味を表しています。
大きく2つに分類される糖尿病
糖尿病には
- 1型糖尿病→体質によって糖尿病になるケース
- 2型糖尿病→生活習慣が原因で糖尿病になるケース(生活習慣病)
に分かれます。
ほとんどの糖尿病患者さんは、2型糖尿病に分類されます。
2型糖尿病は、
- 糖尿病になりやすい遺伝性の性質
- 生活習慣の乱れ(食べ過ぎや運動不足)
などから、インスリンの働きが低下します。
インスリンは血糖を下げる働きのあるホルモンです。
インスリンの働きが悪くなると血糖値が高くなってしまい、2型糖尿病を発症します。
糖尿病の怖さ
合併症を引き起こすリスク
よくある糖尿病の合併症
糖尿病の合併症には、細小血管症である
- 網膜症
- 糖尿病性腎症
- 神経障害
と、大血管症である
- 心臓病
- 脳梗塞
- 末梢動脈疾患
があります。
なかでも「大血管症」の原因となる動脈硬化は、血糖値が高くなることに加え、インスリン抵抗性がもたらす高インスリン血症も原因となり、軽症の糖尿病(または境界型)の段階から進行します。
糖尿病はかなり重症でないと症状は特にありません。
しかし、放っておくと知らない間に症状が進行し、気付いた時には取り返しのつかないことになってしまいます。
糖尿病の患者さんは、これらの合併症を定期的に検査する必要があります。
糖尿病の治療
2型糖尿病の治療
主に糖尿病の合併症を引き起こさないための治療を行います。
血糖値を出来るだけ正常値に近づけるようにすることが重要です。
HbA1cという「1ヶ月の平均の血糖値」を治療の指標として使用し、目標値を目指します。
糖尿病治療の3大柱
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
です。
患者さんの病状に合わせて、治療を進めさせていただきます。
食事療法について
とくに食事療法が一番大事です。
薬だけに頼ったり、運動をしているからどれだけ食べても良いと考えて、食事をおろそかにすることはいけません。
ただし、むやみに食事を制限すれば良いと考えるのも間違っています。
糖尿病は食事で取り入れたエネルギーを効率よく使えなくなる病気です。
食事を制限しすぎると、低血糖を起こしたり、乳酸アシドーシスという命に関わる危険な状態に陥る要因をつくってしまうため注意が必要です。
食事の基本
- ① 身長と普段の活動量できまる適正なカロリーをとる。
- ② 必要な栄養素をバランスよくとる。
- ③塩分のとり過ぎに注意する(目安:食塩6g/日)
- ④間食をしない。
です。
適切な食事療法を実現するには、専門医や臨床栄養士から説明を受けて実行することが大切です。
運動療法
中高年で糖尿病が発症する原因の一つは、運動不足といわれています。
- デスクワークが増えた。
- 自動車や電車での通勤が増えた。
- 加齢と共に運動が億劫になった。
など、自分では気がつかないうちに体を使う機会(身体活動)が少なくなっているのです。
運動療法は、重要な糖尿病の治療であるとともに、予防法でもあります。
【運動療法の注意】
糖尿病の治療で不可欠な運動療法ですが、糖尿病を患っている方は、正しく運動しないと、かえって状態が悪くなることがあります。
運動のポイント
適切とされるおすすめの運動の種類や程度をまとめました。ぜひご参考ください。
- 種目:ラジオ体操、散歩、ジョギング、自転車、水中歩行、水泳
- 強度:最高にきつい運動の40〜60%の強度が標準的です。
→ 運動の強度は運動中断後の脈拍数が目安になります。計測し、自己チェックしましょう。 - 持続時間:30〜60分
- 頻度:週に3〜5日以上
「少しきつい」とういう自覚強度を目標にしていただいても結構です。「汗はかくが、運動しながら会話ができる程度」です。
目標心拍数
年 齢 | 目標心拍数 |
---|---|
20〜39 | 130 |
40〜59 | 120 |
60〜 | 110 |
運動は続けることが難しいといわれています。
続けるこつは、自分に合った方法を見つけることです。
例えば、
- 毎朝、犬の散歩をする。
- 家のまわりや家の中の掃除をする。
- 友達や家族と一緒に運動する。
- 通勤に極力歩く習慣を取り入れる。
など、少しの工夫で続けられる場合もあります。
歩数計で日々の歩数を記録することや、運動日誌をつけることで、より「運動」に対する意欲もわいていきます。
ぜひ、実践してみてください。
血糖管理が重要な理由
2型糖尿病は、できるだけ早く治療を開始する
UKPDS研究という有名な研究で、2型糖尿病と診断されたばかりの患者さんを対象に、厳格に血糖管理を行う場合と、通常のコントロールをする場合を比較しました。
その結果、血糖値を厳格に下げると、やはり細小血管症(腎症・網膜症・神経障害)の発症リスクを低下させることがわかりました。
残念ながら、心筋梗塞の発症のリスクを明らかに低下させるまでには至りませんでした。
しかし、この研究の終了後、さらに10年間の調査を行い解析すると、やはり、厳格に血糖を管理した方が心筋梗塞や総死亡のリスクが下がったことがわかりました。
ですから、新しく発症した2型糖尿病は、できるだけ早く治療を開始することが重要です。
血糖低下療法のリスク
厳格な血糖低下療法は低血糖などをもたらしやすいという短所があります。
特に高齢者や糖尿病にかかっている期間が長い方は低血糖を起こすリスクが大きく、そのような方には、ゆっくりと血糖をコントロールする方が良いと考えられます。
他の危険因子のコントールも重要不可欠
血糖だけではなく、血圧やコレステロールのコントロールも行い、肥満の解消や禁煙も同時に行った場合は、心筋梗塞の発症をしっかりと抑えられるとわかっています。
ですから、糖尿病だけでなく他の危険因子のコントロールも欠かせません。
当院での取り組み
糖尿病は特別な病気ではありません
糖尿病は決して特別な方がなる病気ではなく、私たちの身近にある病気です。
多くの方が患う可能性をもっています。
糖尿病は怖くない
誰もが発症する可能性のある糖尿病。
しかし、血糖や血圧などを良好に維持することで、合併症が起きたり、病状が進んだりするのを予防し、抑えることができれば、あなたは健康人と変わらない健康寿命を得ることができます。
ですから、糖尿病は決して怖くないのです。
下記に主なチェック項目をあげておきます。
該当する方は一度、医療機関を受診し、生活習慣の改善に努めましょう。
チェック項目
- 血糖のコントロールの程度を知る(HbA1cの目標値はいくらか)。
→ 当院では院内で血糖とHbA1cが測定できますので即日結果を知り、治療方針を計画することができます。 - 糖尿病以外の危険因子(肥満、高血圧、脂質異常症など)がコントロールできているか?
→ 定期受診の際に、これらも確認いたします。 - 喫煙をしていないか(必ず禁煙、ただし禁煙で体重が増えないように気をつける)。
- 合併症(神経障害・網膜症・腎症・冠動脈疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患・足潰瘍)の有無を確認する。
→ 合併症の検査を定期的に受けているかはとても重要です。
当クリニックでは動脈硬化の簡単なスクリーニングとして、CAVI(血管の硬さ)、ABI(足の血流評価)、頸動脈エコー(頸動脈の内膜肥厚は全身の動脈硬化の可能性を示唆)、心臓超音波、心電図、尿検査、採血などで、定期的に評価を行います。 - 食事療法はできているか(適正カロリー、栄養バランス、間食をしない)。
→とくに、必要な栄養素をバランスよく摂取しているかが重要です。
※ 例:塩分のとり過ぎに注意する(目安:食塩6g/日)、間食をしないなど。 - 運動療法はできているか(定期的運動、リスクの確認)。
- 薬物治療は適正か(低血糖症状がないか、血糖変動があるか)。