生活習慣病とメタボリックシンドローム
生活習慣病とは
こんな生活をおくっていませんか?
- 毎日、偏った食事を繰り返している。
- 歳を重ねるとともに運動不足が続いている。
- 飲酒・喫煙によってストレスを発散している。
このように、運動習慣や食生活をはじめ、日々の生活習慣の乱れによって生じる病気を「生活習慣病」といいます。
代表的な病気
生活習慣病の代表的な病気としては
- 肥満
- 高血圧
- 高脂血症(脂質異常症)
- 糖尿病
などがあげられます。
これらの疾患が重要視される理由は、患者数が多いことに加えて、動脈硬化を進行させるリスクが高いためです。
また単独の病気としても十分リスクが高いだけでなく、複数の病気が積み重なることでさらにリスクは拡大していきます。
これらのリスクの重なりは、肥満が大きな要因の一つとなっていることが多いです。
メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームは「内臓脂肪症候群」とも呼ばれます。
内臓脂肪の蓄積にあわせて、
- 脂質異常
- 高血糖
- 高血圧
を2つ以上該当した状態を言います。
お腹が出ている方は要注意
とくに中高年男性に多い「内臓脂肪肥満型」は、
- 血圧
- 血糖
- 脂質
の値に異常をきたしやすい状態です。
結果、内臓脂肪肥満型は生活習慣病になりやすいことが分かっています。
動脈硬化とは
動脈硬化は血管の老化
私たちの身体は加齢によって、肌にシワやシミができたり、皮膚がたるんだりする現象が起こります。
それと同じく、血管も年齢とともに老化していくのです。
血管の老化は、外からはわかりません。
そのため、血管の老化に気がつかずに放置してしまうことが大半です。
血液の通り道が徐々に狭くなり、血栓(血管中の血液の塊り)ができて詰まってしまうことがあります。
あなたの知らないところで、血管は傷つき、弱り、しなやかさを失っていきます。
動脈硬化のリスク
動脈硬化によって、
- 心筋梗塞
- 脳卒中
といった、重篤な病気を引き起こします。
動脈硬化は、生命にかかわる老化といえるでしょう。
動脈硬化の検査について
当院では、血圧脈波検査によって動脈硬化の状態を検査することができます。
血圧脈波検査では、
- 動脈の硬さ(CAVI)
- 動脈の詰まり具合(ABI)
- 血管年齢
の3つを測定し、動脈硬化の進行度を検査することができます。
高血圧について
約4,300万人が罹患
高血圧は日本人にもっとも多い病気で、約4,300万人の患者さんがいると推測されています。
そのうち約900万人の患者さんが診察を受けているという現状があります。
残り3,400万人のなかには、高血圧と気づいていない人も含まれているのです。
決して軽視できない病気であることが分かります。
自覚症状がほとんどない病気
高血圧はサイレントキラーともいわれ、自覚症状はほとんど現れません。
しかし、長い時間をかけて動脈硬化を進行させるとても怖い病気です。
高血圧は、
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 腎不全
などの原因となります。
症状がないからといって、高血圧を放置しておくと、突然脳卒中や心筋梗塞になることがあります。
高血圧の診断基準
通常は1回だけの測定で高血圧とはせず、繰り返し測定して判断します。
高血圧の診断基準は、上は140以上、下は90以上です。
また、家庭血圧の基準値はより低く、135/85以上であれば高血圧になります。
130~139/85~89は正常高値血圧で、高血圧ではありませんが要注意の値です。
120/80未満が、循環器病のリスクが最も低い最適な血圧です。
高血圧 | 上:140以上、下:90以上 |
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正常血圧 | 上:140、下:90未満 |
最適な血圧 | 上:120、下:80未満 |
高血圧の基本的な治療法
生活習慣の修正は、高血圧の基本的な治療法としてとても重要です。
すべての患者さんに実施していただきたいことです。
- 正常高値血圧の方
- 家系に高血圧が多い正常血圧の方
は、生活習慣の修正によって高血圧の予防が期待できます。
生活習慣の複合的な修正はとても効果的です。
1.減塩 | 1日の摂取:6g 未満 |
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2.食塩以外の栄養素 | ・野菜や果物の積極的摂取 ・コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える ・魚(魚脂)の積極的摂取 |
3.減量 | BMI(体重[kg]÷ 身長[m]2乗)<25未満 |
4.運動 | ※心血管病のない高血圧患者が対象 中等度の有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上)行う。 |
5.節酒 | エタノールで、男性20~30ml/日以下、女性10~20ml/日以下 |
6.禁煙 |
当院の取り組み
当院では初診の高血圧の患者さんに対して以下の対応を行わせていただきます。
高血圧の有無
本当に高血圧か、またどの程度かを調べます。
外来血圧は白衣現象(※)の可能性があり、本当の血圧を示さない場合があります。
よって家庭血圧の測定を推奨しています。
※ 白衣現象:高血圧の有無にかかわらず、診察室での血圧測定時に、血圧が上昇する現象
高血圧のタイプ
治療開始前に血液中のホルモン値を測定します。(本態性高血圧か2次性高血圧かの判断)
2次性高血圧とは副腎腫瘍、腎動脈狭窄症などが背景にある高血圧のことで、降圧剤治療のみでは完治しません。
手術療法などそれぞれに対する特異的な治療が必要となります。
悪い影響や合併症が起きていないか
高血圧による悪い影響(臓器障害)や心臓血管系合併症は出ていないかを検査します。
- 胸部レントゲン検査
- 心電図検査
- 心臓超音波検査(心エコー)
- 頸動脈超音波検査(頸動脈エコー)
- 動脈硬化の評価(CAVIなど)
以上の検査を実施します。
他の危険因子を診断
採血、尿検査によって、他の危険因子をどの程度もっているかを調べます。
危険因子の有無をしっかり見極め、きちんと把握して初めて適切な治療ができます。
リスクが高くない方は食事運動療法で1ヶ月間経過をみます。
リスクが高い方(速やかに降圧しなければ臓器障害が進行するリスクが高い方)は、食事運動療法と同時に薬物療法を開始します。
高脂血症について
血液中の脂質成分が異常値になっている状態として
- 高コレステロール血症
- 高脂血症
- 脂質異常症
の3つがあげられます。
現在は、「高コレステロール血症」と「高脂血症」を総称して「脂質異常症」と呼ぶようになっています。
脂質異常症とは
血液中には脂質として、
- コレステロール
- 中性脂肪
などがあり、それぞれ生命活動に重要な役割を果たしております。
しかし、これらの脂質が多すぎると身体に支障をきたしてしまう場合があります。
脂質異常症というのは、これらの脂質の中でもとくに
- 悪玉(LDL)コレステロールが多すぎる。
- 中性脂肪が多すぎる。
- 善玉(HDL)コレステロールが少なすぎる。
などの状態を示す病気のことです。
<LDLコレステロール>
コレステロールは血液によって肝臓から末梢(まっしょう)組織に運ばれていきます。
その際、コレステロールが多すぎると血管の壁に入りこみ、動脈硬化を引き起こす一番の要因となります。
動脈硬化発症の担い手になるため、悪玉コレステロールと呼んでいます。
<HDLコレステロール>
血管壁の余ったコレステロールを肝臓へもどす働きをします。
この働きによって、動脈硬化の進行を防ぐことができるので、善玉コレステロールと呼ばれています。
脂質異常症の診断基準
※ 空腹時採血
高LDLコレステロール血症 | LDLコレステロール → 140mg/dL以上 |
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低HDLコレステロール血症 | HDLコレステロール → 40mg/dL未満 |
高トリグリセライド血症 | 中性脂肪(トリグリセライド)→ 150mg/dL以上 |
脂質の管理目標値
普通、血液検査値の基準値はみんな同じですが、脂質異常症の治療目標は、一人ひとり違います。
- 心筋梗塞や狭心症をすでに起こしてしまって治療中の方
- 動脈硬化を進めやすい環境にある方
→ 糖尿病や高血圧、喫煙など
以上の方は、より低いLDLコレステロールを目指していく必要があります。
脂質異常症の治療
まずは食事療法から
- 1:コレステロール摂取量は1日300mg以下を目指しましょう。
- 2:動物性の脂肪を減らし、魚や植物性の脂を多くしましょう。
- 3:アルコールは控えめにしましょう。
→ 1日25g以下に。ビール中瓶1本、日本酒180ml、焼酎100ml程度、ワイン100ml程度。 - 4:食物繊維を多くとりましょう。
→ 食物繊維はコレステロールの吸収を抑えます。 - 5:魚、大豆製品を多くとりましょう。
- 6:清涼飲料水や菓子類などの過剰摂取は控えましょう。
- 7:マーガリン、ショートニング(食用加工油脂の一種)、菓子類に含まれる悪い脂(トランス型不飽和脂肪酸)の過剰摂取は控えましょう。
個人差はありますが、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取量が多いとコレステロール値が高くなり、動脈硬化の進行を早めます。
例:コレステロール値が高くなる食材
卵類(鶏卵や魚卵)、内臓類(レバーやモツ),肉類の脂身や鶏肉の皮、ラード、バター、乳脂肪、ココナッツミルクなど
また中性脂肪値は、食事の量自体が多すぎたり、清涼飲料水またはアルコールを飲み過ぎたり、甘いお菓子を食べ過ぎると高くなります。
反対に、
- 野菜などに豊富に含まれている食物繊維
- 魚油(とくにイワシなどの青魚に含まれるDHA〔ドコサヘキサエン酸〕やEPA〔エイコサペンタエン酸〕などの不飽和脂肪酸)
- 大豆製品(豆腐・納豆など)
は、血清脂質値を下げたり、動脈硬化を抑制するように働きます。
洋食よりも日本食のほうが適しているといえます。
継続が力!運動療法
毎日何らかの形で、体を動かすことは、身体的にも精神的にも好ましいことがはっきりしています。
たとえば、脂質に対しては、中性脂肪が低下し、HDLコレステロールは上昇します。
このほか、
- 血圧を低下させる。
- 糖尿病の血糖コントロールが良好になる。
- うつ病の予防につながる。
- がん予防、動脈硬化の予防につながる。
など、さまざまな良い効果が期待できます。
最適な運動は有酸素運動です。
1日30分程度(1週間合計180分以上)、毎日行うのが理想的です。
運動の強さは、心拍数110~120/分程度を目安に、ちょっときついけど続けられる、と感じる程度です。
くれぐれも無理は禁物です。
当院での取り組み
当院では初診の脂質異常症患者さんに対しまして、
- LDLの値
- 動脈硬化の危険因子
- 臓器障害 など
以上を評価のうえ、各患者さんの目標LDL値の設定、治療法の選択などをご提案させていただきます。
また、2次性の脂質異常症や家族性高コレステロール血症の可能性につきましても初診時に評価させていただきます。
薬物治療が必須の方には速やかに導入いたしますが、そうでない方の場合は、患者さんと一緒に治療法を検討させていただいております。
まずは生活習慣の見直しから
脳梗塞や心筋梗塞は、日本人の死因の上位を占めています。
脂質異常症を放置すると、自覚症状がないまま動脈硬化が進行し、後遺障害が起こる可能性もあります。
終いには、生命の危険にさらされてしまうリスクもありますので注意が必要です。
「症状がないから大丈夫」という考えはとても危険です。
病気の進行を未然に防ぐために、定期的な検査と適切治療を継続的に実施していきましょう。
理想は症状がないうちから始めることです。
無理のない範囲で生涯継続できるように、まずは生活習慣の見直しから始めてみてください。
糖尿病について
合併症を患う怖い病気
糖尿病はかなり重症でないと症状は特にありません。
しかし、放っておくと知らない間に症状が進行し、気付いた時には取り返しのつかないことになってしまいます。
よくある糖尿病の合併症
糖尿病の合併症には、細小血管症である
- 網膜症
- 糖尿病性腎症
- 神経障害
と、大血管症である
- 心臓病
- 脳梗塞
- 末梢動脈疾患
があります。
糖尿病の患者さんは、これらの合併症を定期的に検査する必要があります。